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2024.05.22
Specialpage【vol.11】
戯れの絵柄はどこからやって来る?
ーー春夏のアイテムもだいぶ出揃ってきたみたいなので、今日は今シーズンの柄の話をお聞きしたくて。
德田 今年の春夏は、柄物が豊富よね。
ーー実際、店頭でもよく聞かれるみたいですよ。ブルーナボインの絵柄ってどうやって考えてるんですか? とか、どういう発想したらこの柄に辿り着くんですか? とか。
辻󠄀 そんなんもう血の滲むような努力しかないやん(笑)。
ーーやっぱり(笑)。絵柄って、どんな感じでつくっていくんですか?
德田 まずは自分たちでラフを描いて、それを元に絵をお願いする人とかテキスタイルデザイナーさんと相談しながらつくり込んでいく感じ。
ーーただ絵をお願いするだけじゃないんですね。
德田 線も色もなんだけど、紙とか画面で見るのと生地の上に乗ったときとで全然違って見えるからね。ただ絵を描いてもらうだけでは成り立たない。テキスタイルデザイナーって、ほんとに特殊な技術が要求されるのよ。だからブルーナボインの図案っていうのは、私たちの力だけでは絶対につくれないものばっかり。
ーーテキスタイルデザイナーさんって、絵とか柄は何で描かれるんですか? 手描きですか?
德田 いまは技術がだいぶ発達してデジタルで何でもできるから、手描きは少なくなってきてるかな。
ーーということは、昔はほとんどが手描きだったんですか?
德田 そうそう。ストライプの柄とかも筆1本で描かはったから。定規もなしでフリーハンドで。あれはスゴかった。まさに職人技よね。ブルーナボインのアイテムも、昔は結構手描きでやってもらってたけど。
ーーで、今シーズンの柄なんですけど。テーマが「戯れ」ということで。
辻󠄀 はい、戯れてます。以上!
ーーいやいや(笑)。まず発想のスタート地点はどこにあるんですか?
德田 まずテーマを軸にして、辻󠄀さんといろいろ話しながら図案に落とし込んで行くこともあれば、逆に柄を先に思いついて、そっからテーマに繋がっていくときもある。
辻󠄀 だから一概に「こうやって考えてます」みたいことは言えないのよ。でもほんとはね、絵のタッチとか方向性とかモチーフとか、そういうのはもっと絞り込んだ方がいいと思うねん。
ーーそれはシーズン毎に、ってことですか?
辻󠄀 そう。その方がコレクションとしてもわかりやすいし、まとまりが出るから完成されてる風に見えると思うけど、(キリッと表情を変えて)俺たちはそうじゃないねん!
德田 最後のひと言、言いたかっただけでしょ(笑)。
辻󠄀 (笑)。でも、そのシーズンにつくった物だけでスタイリングして欲しいわけじゃないから。いろいろあった方が楽しいやん。
ーー着たり選んだりする方としては確かにそうですね。
辻󠄀 テーマがあっても突発的に出てくるデザインもあるし、柄物の多いシーズンもあれば少ないシーズンもあるし、「こんなん誰が着んねん!」みたいな柄が出てくることもあるけど、それはそれでいいとボク的には思っています。
ーーでは今シーズンの柄なんですけど、まさに「戯れ」というテーマを物語ってるのがアミグルミーズシリーズだと思うんですけど。
德田 戯れてるよね、ぬいぐるみの動物たちが。
辻󠄀 これはね、出張先で喫茶店に入ったんですよ。そしたら編みぐるみをいっぱい売ってて。
ーーえ、喫茶店でですか!?
辻󠄀 そう。もう箱の中にガッサリ入ってて、見た瞬間に「うわ!めちゃくちゃ戯れてる!」と思って、店の方にお願いしてその場で全部買わせてもらったんです。で、その編みぐるみでTシャツのプリント図案をつくったんですけど、そこからの派生で生まれた柄です。
ーーどうしてまた迷彩柄にぬいぐるみを落とし込もうと思ったんですか?
辻󠄀 対局にあるでしょ、迷彩とぬいぐるみって。いままでも何回か話してるけど、本来は戦闘的な目的で使われる迷彩を、平和なものに仕上げるっていうのが、ブルーナボインのテーマのひとつでもあるので。
ーーそうしようと思うきっかけって何かあったんですか?
德田 昔、迷彩の服を着てて言われたのよ、「戦争を思い出すからあんまり着て欲しくない」って。
ーーそれは取引先の人にですか?
辻󠄀 いや、ボクがアルバイトしてた喫茶店のマスターのお母さんに。実際に戦争を経験してはったから。
ーーそれはなかなか重い言葉ですね…。
德田 でしょ。スゴく考えさせられたもん。
辻󠄀 ただ、この言い方が正しいかどうかはわからないけど、迷彩って人間の生死にも関わってくる柄やから、グラフィックとしてはめちゃくちゃよくできてる。
德田 パターンにしても色使いにしても、自然に溶け込むように考えられてて、それがちゃんとテキスタイル化されてるもんね。だから諸先輩方のそういう思いはちゃんと心に留めておいて、ブルーナボインで迷彩を扱うときはできるだけハッピーに仕上げようって、そのときに決めたよね。
辻󠄀 そうです。
ーーブルーナボインらしい柄ですよね。
德田 でしょ。ルックブックを見ての反響も大きかったみたい。逆にブルーナボインを知らない人から「え、この迷彩、ぬいぐるみ!?」って注目されたりもして。
ーーボク、ブルーのパンツ穿いてて、それ言われたことあります(笑)。アイテム的にはジャケットとパンツと、あとは何かありましたっけ?
德田 ショートパンツがあるので、これからの季節もバッチリ楽しんでいただけます。
ーー続きましてはエアロバティックシリーズ。これは何が描かれてるんですか?
辻󠄀 飛行機とサメとUFO。
德田 このモチーフには2パターンあって、まずネクサスシャツは絶妙な空間をとった配置が面白い。前合わせで柄もビシッと合ってるしね。
ーーどうして飛行機とサメとUFOだったんですか? まったく接点ないような気がするんですけど…。
辻󠄀 最初は飛行機だけでつくろうと思っててね、出来上がってきた絵を見た瞬間、飛行機がハンマーヘッドシャークに見えたんです。で、そういえば飛行機とサメのフォルムって似てるやん、と思って、みんなで戯れてもらいました。
德田 アロハとパンツの柄は、ホントにみんなが一緒になって戯れてるしね。
ーーこれは何の飛行機が飛んでるんですか?
辻󠄀 ジャンボジェットとか軍用機とか、いろいろ。
德田 宮崎駿の映画に出てきそうなのもいてるでしょ。
ーーいてますね、「紅の豚」が乗ってそうな雰囲気のが(笑)。
德田 ちょっと話逸れるけど、「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」って、映画史に残る名言よね。いつか使いたいと思ってんねんけど、なかなか使う機会がなくて(笑)。
ーー普通ないでしょ(笑)。でもこういうアイデアって、結構絞り出して辿り着く感じですか?
德田 絞り出さないと出ないときもある。考えて考えて、何も出てこなくて焦って、これはホントにヤバい、もう諦めるしかない。と思ってたら、玄関で靴履いた瞬間にパッと思いついたり。そんなもんよね。
ーーお酒飲みながら考えたりもするんですか?
辻󠄀 飲みながら思いつくもんなんて、ろくなもんじゃない(笑)。それだけは絶対やったらあかん。
德田 電車に乗ってるときとか結構浮かぶよね。
辻󠄀 移動中とか、あとはお風呂とかベッドの上とか。よく言うのよ、何も考えてないリラックス状態のときの方が、いいアイデアが出てくるって。
ーーでもそれって、普段めちゃくちゃ考えてるからこそ、出てくるんじゃないですか?
辻󠄀 そやろね。意識はしてないけど。
德田 普段から考えてなかったら何も出てこないし、思いつかないし、閃かないと思う。
ーーやっぱり日々の積み重ねが大事なんですね。続きましてLOVEピヨシリーズなんですけど。
德田 これはもう文字の戯れですよ。もともとは「LOVE」っていっぱい描いてある図案があってね。
辻󠄀 もう20年ぐらい前かな。ボクが手描きした図案で。
ーーえ、辻󠄀さんの手描きですか!
辻󠄀 そう。昔は誰かに頼めるほど余裕なかったから、自分らで最後まで描くことも多かったのよ。
德田 で、久しぶりにその図案を見たら、ものスゴいバランスが面白く見えて。それで生地屋さんに「面白い文字なので、ボーダーみたいな感じでリピート付けたりしてみて」ってお願いしたら、なんと。
ーーどうなったんですか?
德田 「LOVEがピヨピヨしてます!」って(笑)。
ーーちゃんと「LOVE」なんですけど、そう言われると「ピヨ」にも見えますね(笑)。
德田 男の人が思いっきり「LOVE」って描いてある服を着るの、なかなか照れ臭いでしょ。
ーーはい(笑)。
德田 だけどここまでピヨピヨしてたら、面白さが勝ってくるかな、と思って。こんな時代やし、「LOVE」は多いに越したことはないしね。
ーーアイテム的にはどんな展開ですか?
德田 LOVEピヨちゃんはいろいろあるのよ。ジャケットでしょ、タンクトップとTシャツとアロハと、ストライプシャツ、パンツもある。
ーー同じ柄でコーディネートしても面白そうですね。
德田 アロハとパンツをセットアップで着たら、まあ目立つよ。私、こないだセットアップで着てて、街でめちゃくちゃ振り返られたから(笑)。
ーーめちゃくちゃ街映えしそうですけどね。
德田 するする。なかなか高揚感もあるよ。逆に私が会ってみたいもん、セットアップの人に。なんかファッションしてるなー、って感じするし。あと今シーズンの柄はシャドーダンスかな。
辻󠄀 シャドーダンスはね、文字通り「影」です。影ってさ、夜に見たらビューンって遠くまで延びてたりするやん。歩きながらそれを見てたら、なんか影が戯れてるように見えてきて。
ーーこれは皆さん、何をしてはるんですか?
辻󠄀 スケボーとローラースケート。
德田 視点が上からっていうのも面白いでしょ。UFOも飛んでるし、もしかして宇宙人の視点?
辻󠄀 そこは皆さんのイマジネーションにおまかせします(笑)。
德田 あとはレオパンダちゃんもアロハで登場します。ヒョウの中にパンダが戯れてるっていうのが、テーマにピッタリだと思ったので。
辻󠄀 (生地を手にパンダの絵柄を探しながら)パンダどこにいてる? ボクはもう心が汚れてるから見えへんのかな?
ーーえ、そういう柄なんですか(笑)。
辻󠄀 あ、見つけた(笑)。
ーーよかったです。レオパンダはアロハだけですか?
德田 コレクションラインではね。でも実は、6月7日から名古屋のラシックで予定してるポップアップで、ジャンパーとパンツをリリース予定なんです。
ーーどっちもなかなか派手そうですね。
德田 かなりね。。
德田 この春夏はいろんな柄と戯れて、ファッションを楽しんでください!