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2024.09.03

Specialpage【vol.12】

平凡と非凡は表裏一体。

ーーさあ、いよいよ2024年の秋冬コレクションが始まりました。

德田 始まりました! そして、今シーズンのテーマは「平凡」です。

ーーリリース予定のアイテム自体は全然「平凡」じゃないような気がするんですけど(笑)。

辻󠄀 いや、あのね、結局世の中にある非凡なものっていうのは、平凡なものがなかったら存在しないものばっかりなんです。

德田 どんなに難しい問題も、平凡な公式を知ってないと解けないでしょ。

ーー確かに。

辻󠄀 刺激のある日常っていうのも素晴らしいけど、それも日々の平和の上に成り立ってる話なんです。そういうことを考えて、今シーズンは物づくりさせていただきました。

德田 Webサイトにも、ブルーナボインの思う「平凡」を載せてますので、読んでいただけると今シーズンのアイテムがまた違ったように見えてくるので、是非ご一読を。

ーーコレクションラインのアイテムは、もう店頭に並び始めてるんですよね?

德田 続々とね。

ーー春先から話題になってたトムティットデニムも?

德田 春先にヘイルメリーマガジンに載せていただいたね。それを見て結構楽しみに待ってくださってた方もいるみたいなんですけど、もう並んでます!

ーー「トムティット」って名前のアイテム、去年の秋冬にも登場してましたよね?

辻󠄀 あったあった。トムティットジャケットが。

ーー確か現代アートのトム・サックスの作風のオマージュ的な。

辻󠄀 このコーナーでも、ちょっとお話ししませんでしたか?

ーーしていただきました、vol.9で。

辻󠄀 トム・サックスって、大衆的なものを大衆的じゃないようにするというか、これはボク個人のイメージなんですけど、見る人を小馬鹿にするような作品をつくるんです。

ーー例えば?

辻󠄀 前にも話したかもしれませんけど、茶碗にNASAのロゴ入れたり、エルメスの箱でマクドナルドのメニューつくったり。で、ジーパンの代名詞といえば?

ーーリーバイス、ですか?

辻󠄀 そう。ヴィンテージをそのままリプロダクトするのも、それはそれでいいと思うんですけど、そういうのはもう専門の人におまかせしてね。ブルーナボインがつくるのであれば、そこにプラスアルファで何かをしないと、ボクたちのお客さんには喜んでもらえないんじゃないかっていうのが、ボクの中にはスゴいあって。

德田 常々「デニムはキャンバス」っていうのを意識してるから、ジーパンをつくるというよりは、どんな絵を描くかを意識してる部分はあるよね。

ーートムティットデニムは赤と黄色とかの生地が付いてたりして、ちょっとオモチャっぽい雰囲気もありますね。

辻󠄀 それはもうトム・サックスさんの芸風ですよ。憑依してたんちゃうかな(笑)。

ーー憑依って、まだご存命でしょ!

辻󠄀 はい、生きておられます。

德田 だから今回のテーマに当てはめると、平凡なデニムパンツから非凡なトムティットさんを生み出すというね。

ーーでもベースのフェリシンデニムもビュッシュデニムもベーシックではあっても、つくり込みは決して平凡ではないですけどね(笑)。

辻󠄀 でもこれ、手が込んではいるけど、実は使ってるパーツ自体は、四角とか丸とか平凡な形ばっかりなのよ。

ーー言われてみると確かに。

辻󠄀 パーツの素材も特別なものじゃない、平凡なナイロンやし。だからある意味、今シーズンを象徴するアイテムなんちゃうかな。

ーーこれ、インディゴは赤とか黄色とかカラフルなパーツを使ってるのに、ブラックデニムのタイプはオールブラックなのはどうしてなんですか?

辻󠄀 考えてるときちょうど、ラグビーでオールブラックス見てたからちゃう(笑)。

ーーウソでしょ?

辻󠄀 どうでしょう(笑)。カラーもいろいろ試したよ。でも、黒が一番しっくりきたから。

德田 トムティットに関しては、辻󠄀さんがYouTubeでもお話ししてますので、それも合わせて見てもらえたら。

辻󠄀 じゃあ次、行きましょか。

ーーなんかどっかに飲みに来てるみたいですね、その言い方(笑)。じゃあ次は新作レザーのB-1ジャンパーを。

辻󠄀 これはね、平凡というかシンプルな革ジャンをつくって欲しいっていう声がありまして。そのときに「こんなイメージで」って見せてくれはったのが、A-1の写真だったんです。

ーーフライトジャケットの。

辻󠄀 そうそう。まあ平凡と言えば平凡やし、今回のテーマにも合ってるんですけど、そのままつくるのも芸ないしね。それ以前に、もともとは飛行機乗る人用につくられた服なので、あのサイズ感では着れないし、それをブルーナボインが得意とするホースレザーでどう料理するかっていうのが腕の見せ所かな、と。

ーーとうことはB-1ジャンパーって、たまに登場する「もしもブルーナボインが○○をつくったら」シリーズでもあるわけですね。

辻󠄀 そうですね。

ーーもしもシリーズをつくるときって、ベースになるヴィンテージって見たりするんですか?

辻󠄀 写真では見るけど、現物は見ない。でもまあ大体知ってるやん。

德田 現物を見てしまうと、そこに引っ張られてしまうでしょ。自分の記憶の中にあるイメージだけを頼りにした方が、意外と面白いものができたりするのよ。たまに元にしたものと全然違う方向に行ってしまうこともあるけど(笑)。

ーーそれこそが真骨頂じゃないですか(笑)。でも、現物なしでサイズとかシルエットはどうやって決めるんですか?

辻 肩幅とか身幅とかを指示したら、ある程度のカタチにはしてくれはるからね。手前味噌で申し訳ないけど、ブルーナボインのパタンナーって、めちゃくちゃ優秀なのよ。これ、ほんまに。

德田 元にしたA-1って凄いクラシックなスタイルだけど、フロントがボタンだったりリブの幅だったり、いま見ると逆に新鮮よね。

ーー古臭い感じはまったくないですね。

德田 でしょ。フライトジャケットをベースにしてるので男っぽいイメージがあるかもしれなけど、B-1ジャンパーって女性が着ても凄く色気あるのよ。パープルとかネービーとかは特に。

辻 男女関わらず、着ていただくとエレガントな感じがすると思うんです。野暮ったくならないように、そこだけはスゴく意識したから。

ーー確かにルックブックのスタイリング見て思ったんですけど、美しさすら感じますもんね。

辻 そろそろ次行こか。

ーー今日はずっと飲みに来てる風で行くんですね(笑)。では最後にN like Cシリーズを。このアイテム名はどういう意味なんですか?

辻 「N」はナイロン、「C」はコットン。で、ナイロンみたいなコットンっていう意味(笑)。

德田 ブルーナボイン、そういう「○○に見えて、実は○○」みたいな素材、大好きなのよ。

ーーこれほんとに綿100%ですか?

辻 もちろん。この生地は見た瞬間に、これや! と思ったもんね。ドライタッチで清涼感もあって、秋口から冬の入口まではトップスとしていけるし、真冬になったらコートのインナーとしても優秀よ。

ーーいわゆるGジャンっぽいデザインなんですけど、野暮ったくないのは素材の力もあるんですかね?

辻 それはもちろんあると思います。あとね、実はボク、その服がどうしたらエレガントな雰囲気になるかっていうのを、いつも考えてるんです。ほんのちょっとだけでもいいから、どんな服にもエレガントな要素を入れられないかなって。

ーーたとえばN like C jumperだと、どの辺りですか?

辻 袖口とか裾とか後ろの切り替え部分とかに、ギャザーをたくさん入れたんです。それでフォルムがほんの少しだけエレガントになったかな、と。昔、これに近いことをやったことがあってね。

ーーブルーナボインで、ですか?

辻 そう。クレヨンGジャンっていう、くるみのタックボタンで、生地もクレヨンで塗ったみたいな雰囲気で、何もかもがソリッドな。それをアップデートしたイメージ。今回は平凡がテーマだったので、できるだけアイテムを構成してる要素が見えないようにして、普通なんだけど普通じゃないものをつくりたかったんです。

ーーそれにしてもこの素材、何回さわっても綿とは思えないんですけど(笑)。

辻 もともとの糸も、スゴくいいのを使ってると思うねん。髪のキレイな人が三つ編みしたら、ピカピカに光るでしょ。あれと同じで。

ーー同じ生地でパンツもあるんですよね。

德田 あるんですよー。テーゼデニムのアップデートみたいなデザインの。

ーーテーゼデニムって腰回りに立体感があって、ちょっとテーパードの掛かったシルエットでしたよね?

辻 そやね。シルエット自体はそれを踏襲してるけど、右側の後ろだけオーソドックスなカタチのポケットを付けたんです。

ーーどうしてですか?

辻 1本のパンツに平凡と非凡が同居してるという。

ーーなるほど!

德田 N like Cは、できたらセットアップで着ていただきたい!

辻 最近よく言われるよな、セットアップの服が気になってるって。

德田 もともとブルーナボインはセットアップが好きでよくつくってるんだけど、カラーものはセットアップにすると特に街に映えるからね。ちょっとした小物でアクセントをつけてもらったら、こんなにカッコよくコーディネートできるんや!って思うことあるもん。

ーー今回のルックブックでも赤のセットアップがレッドカーペットに映えてましたもんね。

德田 でしょ。みなさん赤の服ってなかなか選ばないと思うんだけど、着てみると想像以上に元気出るよ。

辻 弱ってるときには気持ち持っていかれる恐れあるけど、だからこそ着た方がいいのよ。元気なるから。

德田 あ、そうそう。ルックブックの話も少ししとていいかな。

ーーもちろん!

德田 今回のロケ地は特に何があるわけでもない平凡な住宅街。そこに非凡な人しか歩くことができないレッドカーペットを敷いて、モデルさんに歩いてもらったんです。

ーーなんか不思議な違和感ありますよね。

德田 今シーズンのアイテムもそうなんだけど、平凡と非凡は紙一重というか表裏一体みたいなところを表現したくて。で、レッドカーペットを歩いてるんだけど、最後に辿り着くのは…。

ーーオチというか、ちゃんとストーリーがありましたね。

辻 やっぱりそこに行ける平凡な日々というか時間が、我々には必要だと思うんで。

ーー心にゆとりがないと何もできませんもんね。

辻 そうです。ちなみに、どこに辿り着くかは皆さんの目で確かめてみてください(笑)。いい品揃えの店だったと聞いておりますので。

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