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2024.09.27
Specialpage【vol.13】
今年の秋冬は
ミルフィーユ仕立てで。
辻󠄀 さあ、やりましょ!
ーーなんか急いではります?
辻󠄀 もうやることがいっぱいあって、ワケわからんようなってんねん(笑)。
德田 名古屋店の準備もあるしね。
ーーあ、そうですよ! 名古屋に直営店できるんですよね。
辻󠄀 そうなんです。9月28日の土曜日オープンで。
ーーどの辺りですか?
辻󠄀 栄3丁目。ビルの2階なんですけど、いい場所なんちゃうかな。
ーーオープン日には行かれるんですか?
辻󠄀 もちろん! 28日は德田さんと一緒に店頭に立たせていただきます。1万円以上お買い物をしていただいたお客様先着50名には、非売品トートバッグのプレゼントもありますので。
德田 ご希望ならばそのバッグにイラストなんかも描かせていただきますので是非是非!
辻󠄀 で、今日のお話アイテムは何ですか?
ーートリスタンジャンパー、トムティットジャケット2号、バルバシャツの3アイテムをお願いしようかと。
德田 お! 今シーズンの人気3人衆(笑)。
辻󠄀 今シーズンはね、ダウン一発でコーディネートを終わらせて欲しくないっていう気持ちがスゴくあって。
ーー去年も冬は街に出るとダウンばっかりでしたもんね。
辻󠄀 重ね着の面白さって、やっぱりあるからね。秋冬のミルフィーユ仕立てを楽しんでいただこうと思いまして(笑)。
ーーなんか美味しそうですね(笑)。まずはトリスタンジャンパーなんですけど、「トリスタン」って、どういう意味なんですか?
德田 騎士の名前。基本的にコートとかアウターっぽいジャンパー系は、騎士の名前、その中でも特にアーサー王の円卓の騎士が大好きなんで、そこから命名させていただいてる。パラドックスコートだけは違うんだけどね。
ーーそうなんですね。ランスロットコートと同じ命名ラインですね。でもそれだと、いつか円卓の騎士の名前を使い果たす日が来るんじゃないですか?
德田 そうなったら、イケてる騎士を必死で探す(笑)。
ーートリスタンジャンパーはGYOMOシリーズと同じ生地ですか?
辻󠄀 そうです。漁網をリサイクルした。
德田 ブレンドしてるから100%漁網ではないけどね。
ーー何の魚を捕ってた網なんでしょうね?
辻󠄀 イワシちゃう。知らんけど(笑)。
德田 破れたり古くなったりして使えなくなった漁網って、日本だけじゃなくて世界中で問題になっててね。廃棄するにしてもお金掛かるし漁師さんもスゴく困ってるみたいで。
ーーかといって海に捨てるわけにはいかないですもんね。
德田 それで生地屋さんも、何とか漁網を使って生地をつくれないかって思案されてるんだけど、面白い素材ってまだまだたくさんあるわけじゃないのよね…。
ーーなかなか難しい問題ですね。
德田 でもその中でもGYOMOシリーズの生地は、ナイロンなんだけどマットな生地感で、どこか綿ライクな風合いもあって、スゴく魅力的なのよ。
辻󠄀 使い方次第では4シーズン対応できるしね。
德田 そうそう。ライナーも付けられるしね。去年の秋冬に出したプレイヤジャンパーとか、今年だったらリリースが今週のビズキルトジャンパーとか。
ーーライナーあったら真冬でもいけますよね。
辻󠄀 十分いけます。
德田 一枚で着ても新鮮なデザインだしね。これ、フロントのジッパーで挟まれてる部分が、ズボッと外せるようになってってね。
ーーあ、シルエットというか、身幅を変えられるんですね。面白い!
德田 でしょ。中がまだ薄手のインナーでいける秋口とかは、フロント外してタイトに着てもらってもいいし、ライナー付けてアウターにするときには、外さないでちょっとゆとりを持たせたり、いろいろなスタイルで楽しんでいただけます。
ーー丈も最近だと新鮮なぐらい短いですよね。
德田 そうなのよ。Gジャンのインナーにしてもらっても面白いし、ライナーを付けたときにちょっと下から出る感じとか、どう着てもらっても新鮮な空気感が出ると思う。丈の感じとか全体的なバランスが新鮮だからこそ、できたら店頭で試着して欲しいかな。いつもはMサイズの人でもLサイズの方がしっくりくるかもしれないし、その逆もまた然りで。ライナー付けて完全にアウターとしてしか着ないんだったらサイズアップしてもいいかもしれないし。そういう意味ではサイズ選びから楽しんでいただけるアイテムかな、とは思います。
ーーデザインも独特ですよね。ジッパーがいっぱいあって。
德田 フライトジャケットっぽい雰囲気もあるし、ワークウェアっぽい匂いもするしでしょ。
辻󠄀 フライフィッシングのベストみたいな感じもない?
ーーあー、確かに。ちなみにライナーって、トリスタンジャンパーとサイズが違っても付けれるんですか?
德田 ある程度は装着可能。ジッパーじゃなくて、敢えてボタンで引っかける仕様にしたのもそれがあったから。ただ、例えばLサイズとSサイズってなると、ちょっと付けづらいかもしれない。あと、フロントの取り外しできる部分はなくさないよう注意してくださいね。
ーーあれ、どこ直したっけ? とかなりそうですもんね。
德田 折りたたみ傘のカバーと一緒で、その部分だけの販売はしてないので(笑)。
ーー続きましてトムティットジャケット2号なんですけど。去年の秋はデニムでつくりましたよね?
辻󠄀 そうです。ちょっと素材を変えてマイナーチェンジしました。
ーーこれはウールですか?
辻󠄀 縮絨のね。これは製品にしてから洗いをかけてます。ちょっとソフトな感じにしたかったので。
德田 縮絨で、こう絶妙に型崩れした感じって、ものスゴい雰囲気あるもんね。
ーー着込んだ感じとは、また違いますよね。
辻󠄀 違うね。着込んだ感じというか、こなれた感じっていう方が近いかな。それと今回のトムティットには裏地を付けてないんです。だから、パラドックスコートみたいなパーカーを上から羽織ってもらってもスッキリ着れるし、アウターとしても中に着込みやすいし、いろんな遊び方ができる。
ーー形はカバーオールっぽいですけど、厚手のシャツみたいなイメージですか?
辻󠄀 そやね。
德田 最近はサイズ感も、オーバーサイズ一辺倒ではなくなってきてる感じするし、ジャストサイズを選んでもらうのもいいかなって、私は思ったりもしてるんだけど。
ーー裏側が結構カラフルですよね。パンツ(トムティットデニム)は表側がカラフルでしたけど。
德田 楽しいでしょ。表にカラーがあるとボトムと合わなかったり、靴とかも考えてしまいがちだけど、内側だったらその心配もあんまりないもんね。日本の美意識です、これは。
辻󠄀 江戸時代の旦那衆がやってたね。見えない部分に凝るという。実はバルバシャツにも、そういうディテールがあんのよ。
ーーえ、そうなんですか。
辻󠄀 もけもけがいっぱい出てるやん、表から。昔の旦那衆が好んだ、ひげ紬っていう生地があってね。
ーーひげ紬、ですか?
辻󠄀 そう。表にひげみたいに糸を引っ張り出した生地で、ひげが出てれば出てるほど上等っていう。
ーーそれは着物の生地ですか?
辻󠄀 着物の羽織に使う生地。だからバルバシャツに使った生地を初めて見たとき、「お!これはなかなか粋な生地やなー」って思ったもん。
德田 同業の人によく聞かれるよね、「このもけもけ、どうやってるんですか?」って。
ーー元はフラットな生地なんですか?
德田 もちろん。実はこの手法って、ブルーナボインではずっと使っててね。昔、シャンブレーの裏にニットを貼り付けた服をつくったことがあって、それと同じ手法なのよ。
ーーシャンブレーの裏にニット…。どんな服か、ちょっとイメージできないんですけど(笑)。
德田 グレーのウールを使ったんだけど、表のシャンブレーから裏のウールのグレーの糸がフワーッて出てんのよ。
辻󠄀 ロンストでもやった。
德田 やったやった。よう見たらロンストから細かい糸がいっぱい出てんねん(笑)。あれつくったとき、ものスゴく褒められたよね。
辻󠄀 でもまだボクと德田さんがふたりでやってるときやったし、つくったはいいけどシャツで3万円超えてたからね。これはちょっと厳しいんちゃうって、最初はなったけど。
ーー20年以上前ですよね?
辻󠄀 そうそう。そんなこと話してたら、ちょうど生地屋さんが来はって、「これはスゴいもんつくったな。絶対に世に出した方がいい」って言うてくれはって、それでリリースしたのよ。
ーーいまはもうできないんですか?
德田 できるよ、でもビックリするような値段になるよ(笑)。
辻󠄀 倍ではきかへんやろね。でも、よう着たわー。冬場なんかずーっと着てたような気するもん。
德田 もしかしたら、いまでも持ってる人いはるかもしれへんね。これ読んで思い出して、引っ張り出してくれはったら嬉しいけど。
ーー基本的には、それと同じ手法なんですか?
德田 そうそう。表に糸を引っ張り出すね。2枚でやるか1枚でやるかの違いだけ。ただ、どの柄でやってもこの雰囲気が出るかっていうと、そうじゃないのが難しいところで。
ーーボツになることも結構あるんですか?
德田 もちろん。10類ぐらいテストして、生き残るのがひとつあるかどうかみたいなときもあるし。生地屋さんとか、ここに辿り着くまでに、いろんな人の手を経てるからね。感謝しかないです。
辻󠄀 服ってさ、他の服屋さんとか行ってボクらが見たら、シンプルな服でも「うわー、これつくるの大変やったやろな。めちゃくちゃ考えたやろな」っていうのがわかるけど、お客さんにはその部分ってなかなか伝わりにくいのよ。
ーーものづくりのツラいとこですね。料理でもそうじゃないですか。結局は美味しいかどうかで。
辻󠄀 服もほんま一緒やわ。
ーーでもバルバシャツは簡単でないというのは伝わりますよ。見た目とは真逆で、手持ち感がめちゃくちゃ軽やかなのはビックリしましたけど。
辻󠄀 そうなんです。スゴいウォーム感あるんですけど、暑苦しい着心地じゃないので、長袖ですごせる季節やったらずーっと着れる。ちょっと冷えてきたら中にハイネック仕込んでもらってもいいし、インナーにしてもらってもそこまでかさばらないし。
ーーまさにミルフィーユにもってこいじゃないですか(笑)。
辻󠄀 そう! 今シーズンは特にそういうアイテムが多いかな。アウターとしてもインナーとしても、どっちでも楽しんでいただけるという。
德田 つくり手としては毎シーズン新しいのを着て欲しい気持ちはあるけど、1枚でいろんなレイヤードを楽しんでもらいたいっていう思いもあったりするのでね。
ーーそういう提案をしてもらえる場所も、ちょうど増えますしね。
辻󠄀 名古屋店ね。
德田 大阪店、代官山店共々、よろしくお願いします。
辻󠄀 では明日28日、名古屋でお待ちしております。