人気の記事
2023.11.26
Specialpage【vol.9】
神戸阪急で
ドリアンを。
辻󠄀 あ、もう始めますか?
ーーはい。そろそろ。
辻󠄀 その前にひとつだけいい?
ーーどうしたんですか?
辻󠄀 いま『さよなら ほやマン』っていう映画やってるんですけどね。ボクの友達にMOROHAっていうツインのラッパーがいてまして。そのボーカルのアフロが主演をやってるのよ。
ーーアフロさんって、何かのCMに出てませんでしたか?
辻󠄀 チキンラーメン! で、その『さよなら ほやマン』が絶賛上映中なんですよ。
ーーもう観たんですか?
辻󠄀 観た! 良かったよ。でも、なんであれ『さよなら ほやマン』っていうタイトルにしたんやろ?
ーーといいますと?
辻󠄀 これから観る人もいると思うので、詳しいストーリーは言いませんけどね、もの凄く真面目ないい映画なんですよ。
ーーえ、真面目な映画なんですか!? タイトル的にちょっとコメディタッチな映画かと思ってました。
辻󠄀 そやろ。だからちょっと勿体ないな、と思って。よかったら皆さんも是非。やっぱり大きいスクリーンで観やんとね、映画は。で、今日は何の話ですか?
ーー神戸阪急でイベントやってるんですか?
辻󠄀 そうそう。12月5日の火曜日まで、京都の片山文三郎商店さんと一緒に。
ーー片山文三郎商店って、何屋さんなんですか?
辻󠄀 絞りの染め屋さん。大正4年創業の。
ーーめちゃくちゃ老舗じゃないすか。で、その“絞り”って何なんですか?
辻󠄀 生地を糸でクルクルクルって巻いて絞って、それをそのまま染めるわけですよ。そうすると巻いたところは色が付かない、巻いてないところは色が付くでしょ。それで柄を出すという、染色方法のひとつ。
德田 今回のイベントでは、片山文三郎商店さんがやられてる、BUNZABUROっていうオリジナルブランドとコラボさせていただいて。
ーー何をつくったんですか?
辻󠄀 BUNZABUROさんの代表的なアイテムでもあるドリアンバッグ。これ、凄いのよ。使ってないときは、何かわからんぐらいクシャクシャに縮んでるやん。
ーーですよね。パッと置いてあるのを見たときに、まさかバッグとは思わなかったです。時期的にクリスマスのオーナメントかと思いましたもん(笑)。
辻󠄀 せやろ。でも物を入れたら伸びて大きくなんねん。縮んだ状態からは想像できないぐらい、物がいっぱい入るから。で、このバッグが面白いのは、持ってたら何の柄かわからないのよ。クシャッとしてたりトゲトゲしてたりして。
ーー確かにインパクトあるルックスですね。
辻󠄀 バッグやねんけど、凄いアートっぽい雰囲気もあるからね。神戸のオシャレなマダムとかにもおすすめしたいもん。
ーーこれは縮んでない状態ではどんな柄なんですか?
德田 まずはルーラブーラとレオパンダ。それからアメリカンコミック調のお尻がいっぱい描いてある柄。これは昔、バンダナで使った柄でね。あとは将棋の柄と、次の春夏に出す予定の動物のぬいぐるみの迷彩。全部で5柄。
【ルーラブーラ】
【レオパンダ】
【ヒップコミック】
【将棋】
【ぬいぐるみ】
ーー全部ブルーナボインのオリジナルの柄なんですね。
辻󠄀 そうです。どうしてこのコラボが実現したかというとね。BUNZABUROさんとブルーナボインの神戸阪急店は、神戸阪急新館の同じフロアで隣同士なんです。で、何かできたらいいですねって話を、もう1年ぐらい前からしてて。そしたら「ブルーナボインさんって、オリジナルの柄がいっぱいあるから、それをプリントした生地でBUNZABUROのアイテムつくってみましょか?」ってことになりまして。
ーーつくったのはバッグだけですか?
辻󠄀 カーディガンと、ブレスとしても髪留めとしても使えるシュシュみたいなのもつくりました。
德田 カーディガンも、なかなか面白いよね。
辻󠄀 面白いねー。
ーーメンズですか?
辻󠄀 サイズ的にはメンズ、レディース関係ないのよ、なんぼでも伸びるから。でも、普通のカーディガンと違って、超オシャレアイテムやし、職業も年齢も脱ぎ捨てられるような人におすすめしたい。
德田 パーティーとかちょっとしたハレの日にいいよね。
辻󠄀 それはめちゃくちゃいいと思います。片手で足りるぐらいしかつくってないから、絶対に他の人と被ることないし。
ーーバッグもカーディガンも素材自体がめちゃくちゃ伸びるじゃないですか。これって使い込んでいったらトゲトゲはどうなるんですか?
辻󠄀 多少は伸びてくるけど、洗濯したらある程度は元に戻るみたい。ほぼほぼパーマネントです。加工することによって、このカタチが記憶されてるというかね。
ーーそれにしても、ビックリするぐらい大きくなりますよね。
辻󠄀 なるなる。でも重たい物を入れすぎるとダレるから、サブバッグみたいな感じで使ってもらうのもいいんちゃうかな。ボクはいつもメインの鞄の中に忍ばせてます。
ーー生地は防水ですか?
辻󠄀 全然(笑)。あのね、なんでも機能を持たせたらいいってもんじゃないのよ。実用的じゃないものの方が、持ったり使ったりしたときにワクワクするからね。これはもうカタチが自由自在やし、何入れてもらってもいいし、なんやったら帽子にしてもらってもいいし(笑)。
ーー帽子って(笑)。でも、なりそうですね。
辻󠄀 柄があるとはいえ、生地を絞ってあるからカラフルでアートにも見えるし、そういうところも面白がって使ってもらえたら楽しいんじゃないでしょうか。
ーーBUNZABUROさんとのコラボアイテムの販売は、イベント限定ですか?
辻󠄀 そんなにたくさんつくってるわけじゃないし、いまのところはその予定です。売れ切れ御免ということで。あ、そうそう。今回のイベントは神戸阪急の本館1階の特設スペースでやってますのでお間違えなく。
ーーブルーナボインのショップとは別の場所ってことですね。
德田 そうです。うちのショップは新館の3階。今回のイベントは本館の1階。12月5日までやってますので是非!
辻󠄀 德田さんの息子もお手伝いするしね。
ーーえ、ほんとですか!?
德田 そうなの。まあ社会勉強も兼ねてね。そこは別に注目してもらわなくてもいいけど(笑)。
辻󠄀 以上です。今日はこれでおしまい?
ーーいや、もうひとつだけいいですか。だいぶ寒くなってきたので、トム・ティットジャケットのお話もお願いします。
德田 冬仕様のカバーオールね。
辻󠄀 今シーズンのテーマが「狭間」でしょ。だからトム・ティットもアメリカとイギリスの狭間を突いたようなイメージでデザインさせてもらいました。
ーー確かにカバーオールなんですけど、いわゆるオールドアメリカンな雰囲気ではないですもんね。
辻󠄀 襟周りの雰囲気はヨーロッパっぽいしね。このカバーオールを考えてたとき、アメリカの現代アートの人でトム・サックスっていう人がいてるんですね。
ーーはい。
辻󠄀 アメリカ人の視点でお茶席をつくったり、NASAのロゴ入りの茶碗つくったり、エルメスの箱でマクドナルドのメニューつくったり、あとはナイキとコラボもしてはるわ。
ーーへー、面白いですね。
辻󠄀 そんな感じで、懐かしさの中に現代的なクールさを出すアーティストなんですけど、ちょっとそのとき影響されてたと思うわ、トム・サックスの作品に。
ーー具体的には、どの辺が影響されてたんですか?
辻󠄀 イメージやし、なかなか言葉にするのは難しいけど、たとえば真っ赤なチンストラップとか、スッキリしてるけど、どことなくどんくささのあるフォルムとか。
ーーもしかしてトム・ティットの「トム」って、そこから来てるんですか?
辻󠄀 それはまた違うんです。
德田 トム・ティットはイギリスの民話に出てくる妖精の名前。自分の名前を当てられちゃったら消えてしまうんだけど、当てられなかったらお妃はオレのもんだ、みたいなイケズを言いはんねん。でも、結局は自分が口ずさんだ歌に自分の名前が入ってて当てられてしまうという、ちょっとどんくさい妖精(笑)。
ーーどうしてその妖精の名前にしたんですか?
辻󠄀 うーん、覚えてない。これ毎回、思い出すの大変やねん。だっていまもう2024年の秋冬アイテムを企画してる真っ只中なんですよ。もうワケわからんようなってる(笑)。
ーーいろんなものを削ぎ落として未来に向かってるんですね。過去に引っ張られることなく。
辻󠄀 別に引っ張られてもいいねんけどな。ブルーナボインは引っ張られなさすぎやわ(笑)。
ーーだからこそ、毎シーズン、面白いアイテムができるんじゃないですか。
辻󠄀 それやったらええねんけど。
ーー話をトム・ティットに戻しますけど、冬仕様ということは中綿入りですか?
辻󠄀 そうです。で、面白いのがね、中綿は表地にステッチで叩き付けてあるんです。
德田 同色の糸でね。
辻󠄀 だから着込んで色落ちしてきたら、綿が入ってる雰囲気が表に出てくんねん、フワッと。今年より来年、来年より再来年が待ち遠しくなるアイテムです。
德田 こういう綿入りのアイテムって、ダウンとはまた違う懐かしさみたいなのがあるよね。
辻󠄀 日本でいうところの丹前やね。
德田 丸みがあるというか、綿入りの服の素朴で懐かしい感じって、やっぱりいいよね。ダウンも確かにいいねんけど、あれ着てしまったら、他に何もいらんようなるから。
辻󠄀 服というより、究極のギアやからね、ダウンは。だからカナダの人が日本に来たらビックリするらしいよ。
ーー何にですか?
辻󠄀 こんなに暖かいのにカナダグース着てるって。カナダの人たちは零下30度ぐらいの中を通勤するために着てるからね。ダウンはファッションじゃなくて生きるために着るもんなのよ。
ーーブルーナボインでダウンジャケットってつくったことないんですか?
辻󠄀 1回もない。
德田 やっぱり日本って真綿の世界でしょ。個人的にも綿入れんの好きやし、ツイードのジャケットに綿入れたことあったもんね。
辻󠄀 あったあった。
德田 でも、こないだ河田フェザーさんの工場を見学させてもらって、その管理の素晴らしさにちょっとダウンやってみたいとは思ったけどね。
辻󠄀 あれは凄かった。いいダウンって、羽根自体がちゃんと呼吸してんねんて。
ーーどういうことですか?
辻󠄀 羽根って産毛みたいなフワフワの毛がいっぱい集まってできてるやん。その1本1本に弁が付いてて、暑くなったら開いて熱を放出して、寒くなったら閉じんねんて。
ーーそれは羽根が抜けてる状態でも機能してるんですか?
辻󠄀 してんねん。何かが記憶してるらしいのよ。凄いやろ。で、「ダウンは無味無臭」って書いてあんねん。
ーーどこにですか?
辻󠄀 工場に。ダウンって洗浄した後、絶対に獣臭がしたらあかんねんて。
德田 でも、そうするためには徹底的に管理をしないといけなくてね。
ーー獣臭しませんでしたか?
辻󠄀 全くしなかった。いままで正直、ダウンの良さがわからない部分もあったけど、工場見学させてもらって、よくわかったわ。
ーーということは、近い将来にダウンをやるんですか?
辻󠄀 いや、わかったからこそ、やらない。新しいダウンの解釈ができなかったら、ブルーナボインではやるべきではないと思ってる。
ーー普通にダウン入れてつくるだけでは意味がない、と。
辻󠄀 そんなん他でいろいろやってはるやん。
德田 もう、いっそのこと羽毛布団出すっていうのはどうやろ? ちょっとカワイらしいカバーとかケースに入ったの。
ーーそれ、めちゃくちゃ面白いですね。やってください!
德田 でも、持って帰んの大変よ(笑)。
ーー確かに。
辻󠄀 ダウンの話はひとまず置いといて、そろそろアウターも着れるようになってきたし、皆さんも盛大、街に出て、目一杯ファッションを楽しんでください。
德田 BUNZBUROさんとのコラボもよろしくです! 12月5日までやってまーす。